ラストマイル

エッセイ

小包を抱えて郵便局へ向かう。

友人への出産祝いを詰めるために用意した段ボールは真っさらで、どちらが上でどちらが下か分からなくなるので気をつけなくてはならない。

気に入ったものがギフトセットとしてネット販売していたのを見つけたが、現在では入荷待ちになっていたので、それを真似て自分で包装した。

100円ショップは大変便利だ。

ちょうどいいサイズの包装袋も、段ボールも、緩衝材も直ぐに手に入れた。

無味乾燥な箱の中身を、ピンク色の大量の細い紙が守ってくれる。

あれの名前がペーパークッションだということを初めて知った。

ひと言添えるためにメッセージ例を調べる。

男友達に贈る場合の書き出しってどんなかんじだっけ?

奥さまへの気遣いの言葉は?

宛名はどうする?

あ、熨斗とかないわ。

親しき中にも礼儀ありでしょ。

わきまえてますとも。

でも、礼儀やテンプレートを気にするあまり、気持ちが窮屈になってしまうのはもったいない。

固い布団より、柔らかい布団で寝るほうが気持ちいいように。

ふわっとした中身を四角い箱で包む。

ガムテープだけがどうしようもなく、「お荷物」を演出する。

平日のお昼過ぎの郵便局。

窓口で地域高齢者が何かしらの相談をしている。

備えてあるボールペンはなんだか書き心地が悪そうな予感がしたため、持参したボールペンで届け先をサラサラと記入した。

局員に内容物を聞かれる。欄に書いた「ギフト」じゃ情報が不十分だったらしい。

取り扱いを指定できると言われ、上か下か分からなくなると開けた時にペーパークッションしか見えなくなると困るため、上下の向きを間違えないようにとお願いした。

局員が気遣いで「ワレモノ」に丸を付けながら、早ければ明日に届くと教えてくれた。

ありがたい早さだ。

郵便局を出ながら、夏頃に見た映画を思い出した。

ラストマイル。

配達業務における、配送の最後のひと区間。

この荷物もまた、身体に張り巡らされた動脈を流れるように、生活の隅々に漏れなく行き届くのだろう。

友を祝う気持ちに賞味期限はないし、割れもしない。

確実に届いてくれたら、それだけで充分にありがたい。

この世の便利さと、死ぬまで顔を見ることもない配達員さんに感謝した。

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