2025年2月23日。
私は舞台袖に立っていた。
目まぐるしく入れ替わる演者を横目に、次の演目でかける曲と舞台を照らす照明の色を何度も何度も確認していた。
持参したiPadと音出しアプリを「大舞台」で実践投入するのは初めてで、正しく音が始まるか、途中でアプリが落ちないか、最後までバッテリーが持つのかと、次から次へと湧いてくる「万が一」に蓋をしながら、責任と交換して手に入れた特等席から舞台を見守った。演者にとって、観客にとって、スタッフにとって良い発表会になればいいと願いながら。
『iクラブ発表会 2025』
世代を超えた、各クラスのお披露目の場。
駒澤学園の立派な講堂を借りて行うのは3回目だ。今年は出演者、指導者、スタッフ、皆がほんの少しだけ周りを見渡す余裕と、終わった後に充分に達成感と満足感を感じるゆとりがあった。その様子から、前回までの経験と反省がしっかりと反映されているのがよく分かった。
iクラブの発表会は、下は4歳から上は80歳代までが参加する。観ているだけでアドレナリンが出るような元気な演目もあれば、観ているだけでセロトニンが出てリラックスできるような演目もある。
日々の練習の成果を大きな舞台で表現できる機会は多くはない。そんな演者にとって貴重な機会を、私は音響・照明スタッフとしてサポートしながら、出番直前に振り付けや立ち位置を確認する彼らを舞台袖から見送った。
開始の合図に合わせてスイッチを操作する。アナログからデジタルへ信号が伝わる。予定通りに音楽が鳴り、予定通りに舞台が色づく。予定通りに踊れた人もいれば、思うようにいかなかった人もいるだろう。失敗も含めて楽しめたら良い。便利な機材も立派な舞台装置も人間の表現のためにある。
舞台に立つ人、支える人、それを観る人。それぞれの生活の延長線上にあるステージで、たくさんの人の息遣いが交錯するなか、発表会は大きなトラブルもなく順調に進行した。
今年はフィナーレ前にiクラブのスタッフが紹介のために舞台に上がった。私からすれば先輩スタッフ達にもスポットライトを当てたいと思う。iクラブを手作りで立ち上げ、手探りで15年以上続けてきたその歩みとともに。
縁あって私もスタッフとして参加し、現在は広報部副部長、そして講座の担当講師という普段の「理学療法士」という仕事とは違う役割を持っている。iクラブは猫の手も借りたいくらい雑多な仕事が溢れている中で、令和に些か時代遅れな「ボランティア精神」を大切にしている稀有なコミュニティだ。
だが、課題だらけの社会の中で100年生きていくために「運動」と「コミュニティ」の重要性が高まっていて、このクラブの存在は一周回って新しい価値を生み出していると思う。お金ではなく時間が対価となりつつある新しい時代において、皆が少しずつ自分の時間を使って地域貢献している様はむしろようやく時代が追いついたのではないかとさえ思う。
私は広報部の仕事として現在、パンフレットやWebページのデザインを新しく考えている。まったく本業ではないからこそ気づくことがある。デザインとは何か新しいシンボルを考えることでも、見やすいチラシを作ることでもない。デザインの先にいる人の行動や生活の変化を促せてこそ良いデザインではないだろうか。
では、iクラブで何をデザインしたいのか。それは地域の人達の健康な生活と、その居場所を創ることだろう。そしてそこに参加する人たちの自分らしい人生も。
『どこまでできるのだろうか』
日々の運動や練習も。
演技やスキルの上達も。
発表会のクオリティも。
そして、このクラブ自体の存続も。
いつまでも動ける身体と、仲間と運動が楽しめるこの場所の価値を誰よりも理解しているつもりだ。人手不足な状況であるからこそ、私は理学療法士として、沢山の人に働きかけられるこの「仕事」でもあり「趣味」でもあるような活動にやりがいを感じている。病院では一人ひとりに働きかけても限界があるが、ここなら沢山の人が集まる。職場では責任ある立場である私も、ここに来ると永遠の”若手”である。人生の先輩たちに学ぶことが多く、それがとても楽しい。
さて、この文章をここで最後まで読んだあなたは変わり者だと思う。それとも時間に余裕があるお方なのかもしれない。お金よりも時間が対価になってきたと言ったが、そうなるとあなたはとても”裕福”な立場にあるのかもしれない。その時間を地域のために使ってみるのはどうだろうか。そして「万が一」にもiクラブの活動に関わってみたいと思えたならば、事務所に立ち寄ってほしい。iクラブには色々な関わり方がある。まずは興味のある運動に参加してみるのはどうだろうか。
iクラブはみんなの生活の延長線上にある。
私はそこで働く理学療法士で、講座講師で、広報部副部長で、音響・照明担当である。
たくさんの人が交錯するこの舞台をサポートできたらいい。
この舞台袖から。
iクラブ広報部副部長
スポーツ健康講座講師・個別運動講座講師
理学療法士 今井
(NPO法人iクラブ広報部 壁新聞用に執筆)
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