足は口よりも雄弁だ

臭い話ではないので、悪しからず。

“人って足元に出るよね”という話を、同僚とよくする。靴(特に踵)に対して無頓着な人に限って、あっちが痛いこっちが痛いと訴える気がする(エビデンスはもちろんない)。簡易的なサンダルで院内や街中を闊歩している姿を目にすると、ちゃんと靴を履くだけで変わるのに残念だなと思う。あなたが思っている以上に、その足音は大きく聞こえている。

あなたの足はあなたのものですよ。

二本足で立ち、歩き始めてから人生を共に歩んできた足に、もう少し配慮があってもいいんじゃないですか?

一方で、毎度脱ぎ履きするたびに靴紐を解き、また丁寧に結ぶ学生さんがいる。見た目や会話がふわふわしていても、根本なところで人間がしっかりしているな、なんて思わされる。ご家庭での教育なのだろうか。整形外科に勤める理学療法士として、好印象この上ない。

靴も道具である。道具に使われるのではなく、身の丈にあった使いこなしができているかは、身体を見れば分かる。オシャレや印象作りの話ではなく、人柄や人間性が伝わる。占いみたいなものだが、あまり外れたことはないと思う。

足は口よりも雄弁だ。

そんな足から運動機能を評価しようと目を向ける。たまに、足の裏にかわいいシールを付けている人がいる。お子さんの年齢や、家庭の雰囲気まで足跡に残してきたようで微笑ましくなる。たまに、キャラクターの靴下を履いてくる人がいる。足趾の運動に合わせてぴょこぴょこと、こっちを見つめながら頷いている。

繊細で沈着な女性が、自宅にハサミがあるにもかかわらず、ハサミを使わずにタグが切れる裏技を試して、穴があいた靴下を履いてきたり。

豪快で快活な男性が、仕事で靴下を濡らしてしまったと言って、コンビニで買ってきましたと、わざわざ履き替えてくれたり。

顔や服装、態度では図れない人間性が垣間見える。

たるんだ靴下やほどけた靴紐は心のゆるみ。ほんの些細なことで思わず足を掬われないように、足元を見つめなおしてはいかがだろうか。

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